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【高校生物】「ハーディ・ワインベルグの法則」を実際に計算してみよう!

ハーディ・ワインベルグの法則 高校生物

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今回のキーワード:
遺伝子プール、遺伝子頻度、対立遺伝子、ハーディ・ワインベルグの法則

ハーディ・ワインベルグの法則を実際に計算して、確かめてみます!
計算はできるだけ省かず、1つずつ丁寧に解説するよう心がけました。少し難しい内容ではありますが、自分でも手を動かしながら1つずつ式を追っていきましょう。

ハーディ・ワインベルグの法則とは

ある集団内における対立遺伝子の割合のことを、遺伝子頻度と言います。(→「遺伝子頻度」
遺伝子頻度は、次の5つの条件を満たせば、何世代たっても変化せず一定になります。

  • 個体数が十分に多い
    (→遺伝的浮動の影響を受けない)
  • 他の集団との間で個体の出入りがない
    (=遺伝子の流入や流出がない)
  • 突然変異が起こらない
  • 自然選択が起こらない
  • ランダムに交配する(自由交配する)

「これらの条件がすべてそろったとき、遺伝子頻度は常に一定になる」ということを唱えたのが、ハーディ・ワインベルグの法則です。

ハーディ・ワインベルグの法則を実際に計算してみよう

では、本当にハーディ・ワインベルグの法則が成り立つのか?
実際に計算をして確かめてみましょう。

具体例として、ここに100匹のマウスの集団があるとしましょう。
そしてこの集団には、遺伝子型が「AA」のマウスが40匹、「Aa」のマウスが40匹、「aa」のマウスが20匹いるとします。
このとき、この集団の遺伝子プール内には、遺伝子Aが \( \small{40 \times 2 + 40 = 120} \) 個、遺伝子aが \( \small{40 + 20 \times 2 = 80} \) 個あると考えることができるます。よって、遺伝子頻度はそれぞれ\begin{eqnarray}{Aの遺伝子頻度} &=& \frac{120}{120+80} = 0.6 \\[5px] {aの遺伝子頻度} &=& \frac{80}{120+80} = 0.4 \end{eqnarray}となります。

では次に、この5匹のマウスがランダムに交配して子が生まれたときの、子の世代の遺伝子頻度を考えていきましょう。

まず、卵子がもつ遺伝子がAだった場合。
卵子の遺伝子がAである確率は、0.6です(親世代の遺伝子頻度より)。一方、これと受精する精子がAを持つ確率は0.6、aを持つ確率は0.4になります。
よって、卵子がAだった場合、子の遺伝子型がAAになる確率は \( \small{0.6 \times 0.6 = 0.36} \) 、Aaになる確率は \( \small{0.6 \times 0.4 = 0.24} \) です。

同様に、卵子がもつ遺伝子がaだった場合は、この遺伝子型がAaになる確率は \( \small{0.4 \times 0.6 = 0.24} \) 、aaになる確率は \( \small{0.4 \times 0.4 = 0.16} \) です。

よって、卵子の持つ遺伝子がAの場合とaの場合を合わせて考えると、子の世代における遺伝子型の割合は、AAが \( \small{0.36} \) 、Aaが \( \small{0.24+0.24=0.48} \) 、aaが \( \small{0.16} \) になります。

もし、子が全部で100匹いたとすると、全体の個体数に各遺伝子型の割合をかけ合わせて、AAは36匹、Aaは48匹、aaは16匹いることになりますね。
よって、子の集団の遺伝子プールには、遺伝子Aが \(\small{36 \times 2 + 48=120} \) 個、遺伝子aが \(\small{48+ 16 \times 2 =80} \) 個あることになるので、遺伝子頻度はそれぞれ \begin{eqnarray}{Aの遺伝子頻度}&= \frac{120}{120+80} =0.6 \\[5px] {aの遺伝子頻度}&= \frac{80}{120+80} =0.4 \end{eqnarray} となり、親世代と全く同じになります。

【応用】ハーディ・ワインベルグの法則の計算(一般化)

さて、上の計算では具体的な数字を当てはめて考えてみましたが、これをさらに一般化して考えてみましょう。

ある集団内における対立遺伝子Aとaの遺伝子頻度を、それぞれ \( \small{p, \ q \ (p+q=1 \ (*))} \) とします。

すると、ランダムに交配してできた子の世代の各遺伝子型(AA, Aa, aa) の割合は、それぞれ \( \small{p^2}, \ \small{2pq}, \ \small{q^2} \) になります。(下の表より)

ここから、子の世代の各遺伝子型の個体数は、AAが \({全個体数} \small{\times p^2}\)(匹)、Aaが \( {全個体数} \small{\times 2pq} \) (匹)、aaが \( {全個体数} \small{\times q^2} \) (匹)と計算できます。

よって、子の世代の遺伝子プールにおける遺伝子Aの数は

\begin{array}{l} \normalsize{全個体数} \small{\times p^2 \times 2}+ \normalsize{全個体数} \small{\times 2pq} \\ = \normalsize{全個体数} \small{\times(2p^2+2pq)} \ (個) \end{array}

遺伝子aの数は

\begin{array}{l} \normalsize{全個体数} \small{\times 2pq} + \normalsize{全個体数} \small{\times q^2 \times 2} \\ = \normalsize{全個体数} \small{\times(2pq+2q^2)} \ (個) \end{array}

となり、遺伝子頻度は、

\begin{array}{l}{Aの遺伝子頻度} \\ \quad =\frac{{全個体数} \times(2p^2+2pq)}{{全個体数}\times(2p^2+2pq)+{全個体数}\times(2pq+2q^2)} \\ \quad =\frac{{全個体数} \times(2p^2+2pq)}{{全個体数}\times(2p^2+4pq+2q^2)} \\ \quad =\frac{2p^2+2pq}{2p^2+4pq+2q^2} \\ \quad =\frac{2p(p+q)}{2(p+q)^2} \\ \quad =\frac{p}{p+q} \\ \quad =p \qquad \small{(仮定(*)より、p+q=1)} \end{array}

\begin{array}{l}{aの遺伝子頻度} \\ \quad =\frac{{全個体数} \times(2pq+2q^2)}{{全個体数}\times(2p^2+2pq)+{全個体数}\times(2pq+2q^2)} \\ \quad =\frac{{全個体数} \times(2pq+2q^2)}{{全個体数}\times(2p^2+4pq+2q^2)} \\ \quad =\frac{2pq+2q^2}{2p^2+4pq+2q^2} \\ \quad =\frac{2q(p+q)}{2(p+q)^2} \\ \quad =\frac{q}{p+q} \\ \quad =q \qquad \small{(仮定(*)より、p+q=1)} \end{array}

となります。
ちゃんと親世代の遺伝子頻度と同じになりましたね…!!

実際の自然環境では、遺伝子頻度は変化する

さて、5つの条件がそろっているときにハーディ・ワインベルグの法則が成り立つことは、実際に計算して確認することができました。

しかし、実際にはハーディ・ワインベルグの法則の前提条件が全てそろうことは、まずありえません。
自然界なら、偶然遺伝子が消えたり現われたりすることはありますし(突然変異など)、形質の違いにより有利・不利の差が生まれて自然選択なども起こりえますよね。

なので、実際の自然環境ではハーディ・ワインベルグの法則は成り立たず、遺伝子頻度は世代を超えて変動していきます。
これにより、生物は多様な進化を遂げてきたのです。

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