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染色体突然変異
染色体の構造の異常(欠失・重複・逆位・転座)や染色体数の異常(異数性・倍数性)を、イラストで分かりやすく解説します!
染色体突然変異とは(復習)
変異とは、同種の個体間で形質の変化が現れることです。
変異は生後の環境のちがいが原因で生じるもの(環境変異)や、染色体やDNAが変化して生じるもの(遺伝的変異)があります。(→参考:変異の種類)

遺伝的変異の中でも特に、染色体が変化して生じる変異を、染色体突然変異といい、染色体の構造が部分的に異常になったり、染色体の数が異常になったりします。

染色体の構造の異常
染色体の構造に部分的な異常が生じると、遺伝子の発現に影響します。
染色体の構造の異常には、欠失・重複・逆位・転座があります。
欠失
染色体の欠失とは、染色体の一部が切れて失われた状態です。
この場合、欠失部分に重要な遺伝子が含まれていると、その遺伝子の発現量が減ってしまい形質に影響が出る場合があります。
一方で、もう1本の染色体が正常で遺伝子の発現量を十分に補えれば、特に問題にならない場合もあります。

重複
染色体の重複は、染色体の一部分が重複した状態です。
この場合、重複した部分に含まれる遺伝子の発現量が過剰になるため、形質に影響を与える場合があります。
例えば、キイロショウジョウバエの眼の形を制御する遺伝子を含む染色体の部分が重複を起こすと、眼の形が細長い異常な形になってしまうことが分かっています。

逆位
染色体の逆位とは、染色体の一部が切れて、逆向きに挿入された状態です。
この場合、遺伝子じたいは失われていないので、その個体に影響が出ることは稀ですが、減数分裂の際に染色体の分配がうまく行われず、子孫に影響が出る場合があります。

転座
染色体の転座とは、染色体の一部が切れて他の染色体にくっついてしまう状態です。
この場合も逆位と同様に、その個体よりも減数分裂の際に染色体の分配が不均衡になり、子孫に影響が出る場合が多くなります。

染色体の数の異常
染色体の異常は、構造の異常だけでなく、数が異常になる場合もあります。
これは、主に減数分裂で配偶子が作られる際に、染色体の分配が正常に行われなかったために生じます。
染色体数の異常には、一部の染色体の数だけが異常な異数性と、すべての染色体が1セット丸々多くなってしまう倍数性があります。
異数性
細胞の核に含まれる染色体の数は通常2nですが、ある一部の染色体だけが1本多かったり少なかったりして、核内の染色体数が2n+1本や2n-1本になっている場合を、異数性といいます。
例えば、ヒトの遺伝病のひとつ、ダウン症は、21番目の染色体が通常よりも1本多い状態です。
これにより、知的障害や心臓病、特徴的な顔つきなどが生じます。

倍数性
倍数性は、通常は2nの染色体数が、3n(三倍体)、4n(四倍体)になっている状態です。
これは、減数分裂の異常によって生じます。
通常は、2nの体細胞から減数分裂を経てnの配偶子が形成されます。
ところが、減数分裂がうまくいかず、2nの配偶子がつくられることもあります。
この2nの配偶子とnの配偶子が受精すると3nの個体が、2nの配偶子どうしが受精すると4nの個体が生まれます。

倍数体は必ずしも生き残れるわけではありませんが、魚類や両生類、植物では比較的よく見られます。
例えば、私たちが主食で食べるパンコムギは六倍体です。
まとめ
- 染色体突然変異
染色体の構造や数が変化して生じる変異。 - 染色体の構造の異常
欠失・重複・逆位・転座がある。 - 染色体の数の異常
異数性・倍数性がある。