現在の生物:DNAワールド
現在の生物では、DNAが遺伝情報を担っています。
そして、タンパク質(酵素)によってDNAからRNAに遺伝情報が転写され、その後翻訳されてタンパク質が作られます。
このように、DNAが遺伝子の本体としての役割を負い、タンパク質(酵素)やRNAが補助する形で遺伝情報の発現を行う世界は、DNAワールドと呼ばれています。
RNAワールドとは
一方、初期の生物では遺伝情報から触媒としての役割までをすべてRNAのみが担っていたと考えられています。
このような時代を、RNAワールドと呼んでいます。
はじめは、RNAが遺伝情報から触媒としての役割まで全てを担っていました。
ところが、多様なタンパク質が合成できるようになると、触媒としての役割は次第にタンパク質(酵素)へと移っていきました。
また、RNAは1本鎖でそれ自体反応性が高い物質なので、遺伝物質としては少し不安定な物質です。
そのため、遺伝物質はより安定なDNAへと置き換わっていき、RNAは補助的な役割のみにとどまるDNAワールドに移行していったと考えられています。
RNAワールドの根拠①RNAはDNAより単純な物質
RNAワールドの根拠に、RNAはDNAよりも単純な物質であることが上げられます。
初期の生物では、DNAを獲得するよりも以前にRNAを獲得していたと考えられます。
RNAワールドの根拠②RNAは触媒作用を持つ
また、RNAの中には触媒作用をもつものもあります(例:リボソームなど)。
そのため、タンパク質がなくてもRNAのみで触媒作用を担う事ができたと考えられます。
RNAワールドの根拠②一部のウイルスの遺伝物質はRNA
さらには、一部のウイルスでRNAが遺伝情報を担っていることが分かっています。
ウイルスは、生物と無生物の中間的な存在で、生物の原始的な姿に近いとも考えられます。
そのウイルスで、DNAを遺伝物質として持つものの他に、RNAを遺伝物質として持つものもあるというのです。
この発見は、初期の生物でもRNAを中心とした世界だったのではないか?という考えを強く後押ししました。
まとめ
- DNAワールド
現在の生物では、DNAが遺伝情報を担い、RNAやタンパク質が遺伝子の発現を補助する。 - RNAワールド
初期の生物はDNAや複雑なタンパク質を持っておらず、RNAが遺伝情報から触媒としての役割まで全て担っていたと考えられている。