今回は、体内の血糖濃度が一定に保たれるしくみについての解説です!
体内における糖の流れ
まず、体内で糖がどのような状態で存在しているかを見ていきましょう。
私たちが食物からとった糖(デンプンなど)は、消化されてグルコースになります。
グルコースは小腸で吸収されて毛細血管に入ります。
血液中のグルコースの一部は、肝門脈を通って肝臓に運ばれます。肝臓では、グルコースがグリコーゲンに変換されて、貯蔵されます。
また、グルコースが血液に運ばれて細胞に入ると、ATP合成のエネルギーとして使われたり、脂肪に変換されたりします。

血液中のグルコースの濃度のことを、血糖濃度と言います。
血糖濃度は、約0.1%になるように調節されています。
血糖濃度を約0.1%に保つために、自律神経やさまざまなホルモンが関与しています。
そのしくみを詳しく見ていきましょう!
血糖濃度を下げるしくみ
血糖値を下げるには、インスリンというホルモンが働きます。
- 血液中のグルコース増加(高血糖)を、視床下部が感知する。
- 視床下部から副交感神経を介して、すい臓のランゲルハンス島Bからのインスリン分泌が促進される。
- インスリンによって、グルコース→グリコーゲンの反応や、細胞内へのグルコース取り込みが促進される。
- 血糖濃度が下がる。
血液中のグルコース増加は、ランゲルハンス島B細胞にも直接はたらきます。

血糖濃度を上げるしくみ
血糖濃度を上げる主なホルモンは、グルカゴンです。
- 血液中のグルコース減少(低血糖)を、視床下部が感知する。
- 視床下部から交感神経を介して、すい臓のランゲルハンス島A細胞からのグルカゴン分泌が促進される。
- グリコーゲン→グルコースの反応が促進される。
- 血糖濃度が上がる。
血液中のグルコース減少は、ランゲルハンス島A細胞にも直接はたらきます。

また、低血糖の度合いが通常よりもひどい(例えば、運動した直後や飢餓状態などの)ときは、グルカゴンに加えて、アドレナリンや糖質コルチコイドというホルモンも働きます。
アドレナリンは、交感神経の働きで副腎の髄質から放出され、グルカゴンと同様にグリコーゲン→グルカゴンの反応を促進します。
一方、糖質コルチコイドは、脳下垂体前葉から放出される副実皮質刺激ホルモンの働きによって副腎の皮質から放出され、タンパク質(筋肉など)を分解してグルコースにする反応を促進します。
これはつまり、筋肉を削ってまで糖を作り出すということなので、飢餓状態など相当ひどい状態のときに起こる最終手段です。

アドレナリンや糖質コルチコイドは、体温調節にもはたらきます。
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糖尿病
糖尿病とは、血糖濃度が常に高い状態になってしまう病気のことです。
インスリンが正常に分泌されなかったり、正常に働かなかったりして、血糖濃度を下げるしくみが働かず糖尿病になってしまいます。
糖尿病は、大きくI型とII型に分けられます。
I型糖尿病
I型糖尿病は、なんらかの原因でランゲルハンス島B細胞でインスリンが作られなくなってしまうタイプです。
この場合、インスリンが少ないことが原因なので、インスリンを投与することで血糖値を低下させることができます。
II型糖尿病
一方、II型糖尿病は、インスリンは分泌されているのに、インスリンが正しく作用しない(インスリン感受性が低下している)ために起こります。
この場合、インスリンを投与しても、血糖値は低下しません。
まとめ
- 糖はグルコースの形で体内に存在する。
一部のグルコースは、肝臓でグリコーゲンに変換されて貯蔵される。 - 血糖濃度を下げるホルモンは、インスリン。
- 血糖濃度を上げる主なホルモンは、グルカゴン。
運動直後や飢餓状態のときは、アドレナリンや糖質コルチコイドも放出される。