DNAは、遺伝情報を保存している大切な物質です。
このDNAは、新しい細胞をつくるときには、正確にコピーされて受け継がれなければなりません。
今回は、DNAがどのようにして正確にコピーされるか、その仕組みを見ていきましょう!
DNAの複製とは
DNAには、形質を決める遺伝情報が含まれています。
そのため、DNAは正確にコピーされて新しい細胞に受け継がれなければなりません。
DNAのコピーをつくることを、DNAの複製といいます。
DNAが正確にコピーされるために、DNAの複製はどのような仕組みで行われているのでしょうか…?
正確にコピーするしくみ① 塩基の相補性
DNAは二重らせん構造をしています。
そして、このDNAの2本の鎖は、互いに相補的な塩基が向かい合わせになって2本くっついているのでしたね。
DNAのコピーでは、この塩基の相補性が利用されています。
塩基の相補性を利用すれば、
例えばDNAの2本鎖のうちどちらか1本の塩基配列が分かれば、もう一方の鎖の塩基配もが自動的に決まります。
つまり、2本鎖のうちの1本を鋳型にして、あとは塩基の相補性に任せてヌクレオチドをどんどんつなげていけば、DNAのコピーができる!ということです。

これは、全然別の場所にDNAの設計図を置いておいて、それを見ながらDNAをゼロからつくるよりも、はるかに効率がよく、しかも正確です。

正確にコピーするしくみ② 半保存的複製
DNAの複製は、塩基の相補性を利用して、もとのDNAから正確なコピーが作られます。
このように、1本は古い鎖をそのまま残して、それを鋳型にして2本目の新しい鎖を作るしくみを、半保存的複製と呼びます。

半保存的複製では、塩基の相補性を利用して新しいヌクレオチド鎖が作られるので、効率的で正確なコピーが可能です。
また、半保存的複製にはもうひとつ別のメリットもあります。
半保存的複製で古い鎖を鋳型に新しい鎖を作っても、その正確さは100%ではありません。たまに間違った塩基が並んでしまうことがあります。
例えば、新しく合成されたDNAの2本鎖のうち、一方の塩基がAなのに、それと向かい合う塩基がCになっていることもありえるのです。(正しくはTでなければなりません)
こんな時、もし2本とも新しく作られたヌクレオチド鎖だったら、おかしな塩基の組み合わせがあっても、どちらが正しくて、どちらが間違っているか分かりません。
でも、半保存的複製であれば、2本のうち1本はもとのDNA由来のもので、そちらは正しい塩基配列を持っているはずなので、おかしな塩基配列の組み合わせがあったら、その場合は「新しく作られたヌクレオチド鎖が間違っているのだ!」と判断することができます。
半保存的複製は、正確なコピーを作る仕組みであると同時に、エラーが出た場合の修正ができる仕組みでもあるのです。

半保存的複製の発見:メセルソンとスタール
DNAの複製の仕組みがまだ分からなかった頃、
DNAの複製の方法は様々な仮設が立てられました。
欲に有力な3つは、「新しいDNAの2本鎖は、2本とも新しいヌクレオチド鎖からできている(保存的複製)」という説、「もとのDNA由来の部分と新しいDNA由来の部分が混ざっている(分散的複製)」という説、「もとのDNA由来の鎖と新しいDNA由来の鎖を1本ずつもつ(半保存的複製)」という説でした。
これらの説に決着を付ける実験を行ったのが、メセルソンとスタールです。
彼らは、窒素の同位体を用いた大腸菌の培養実験によって、半保存的複製の説が正しいことを証明しました。
※メセルソンとスタールの実験について、詳しくは下の記事で解説しています!↓
DNAの複製 まとめ
- DNAの複製
DNAのコピーをつくること。 - DNAは、塩基の相補性を利用してコピーが作られる。
- 半保存的複製
新しいDNAの2本鎖は、1本はもとのDNAのヌクレオチド鎖、もう1本は新しく作られたヌクレオチド鎖になっている。
DNAの複製をさらに詳しく学びたい人は…
DNAの複製に関わるタンパク質など、より詳しくは「生物」分野で解説しています!